海外活動

マスカット基金はこれまでに、以下のような海外活動を展開してきました。

テンカワン油の利用

 

2017年9月15日から9月23日にかけて9日間の短期出張でインドネシアにでかけ、テンカワン油のとれるフタバガキ科の樹木に関する利用状況と付加価値をつけた販売・マーケティング手法についてカリマンタン(ボルネオ島)での現地調査を実施した。この調査は、住民にとっての現金収入源となるテンカワン油の利用と事業化の可能性を探るものであった。森林の民であるダヤック族へのインタビューや観察を通して、コショウ・ゴム・焼畑稲作・家畜飼養などの生業形態、村々とテンカワン林の位置関係、住民によるテンカワンの位置づけ、オランダ人による搾油工場建設やその他の支援事業、アブラヤシのプランテーションと地形との関係などの基礎情報を得ることができた。その後、国内におけるテンカワン油の販路の開拓にも力を注いだ。テンカワン油のサプライチェーンを確立することができれば、住民の現金収入源の確保に加えてテンカワンが生育する天然林の保全が可能になる。つまり、地域住民の生計向上と地域の環境保全の両立に繋がり、このことはマスカット基金が目指すところと極めて一致している。

参考資料:AAIニュース第99号:インドネシア・カリマンタンへのぶらり旅

テンカワンの森へ 

テンカワンの大木 

テンカワンの板根

テンカワンの実

中米帰国研修員活動調査

 

2012年12月、中米の国エルサルバドルとニカラグアにおいて、JICA筑波で実施している野菜栽培技術コース研修員の帰国後の活動調査を実施した。 直接インタビューすることで、彼らが本邦研修の成果を如何に活用し日々の業務に取り組んでいるかを詳細に知ることができた。研修を本邦で実施することにより、知識や技術といったこと以外の大切なモノも彼らに伝えられるのだと知った。そして彼らがとても日本を好きになっていることを感じた。帰国研修員は皆旧知の友人のように訪問を歓迎してくれ、日本での日々を懐かしみ、話は尽きることがなかった。帰国研修員との我々の間には確かな信頼関係が結ばれていることを確認することができた。研修事業は「人づくり」事業と言われるが、「人づくり」に最も大切なものは信頼関係であると身をもって感じることが出来た。途上国における「国づくり」の基本は「人づくり」であり、「人づくり」に資する活動がマスカット基金の基本姿勢であると考えている。

 
参考資料:AAIニュース第81号~84号:中米帰国研修員活動調査報告

国内での研修風景 

研修員との再会

現地での人参栽培 

現地でのピーマン栽培

アラビア湾岸諸国可能性調査

アラビア湾岸諸国、特にアラブ首長国連邦(UAE)とオマーンはマスカット基金関係者にとって極めて馴染みが深い国々であるため、基金としての候補活動を整理するために2011年に可能性調査を実施した。具体的には、植物工場関連、植物資源関連、水産関連、第三国研修関連、水資源関連等の分野における可能性を探るために、現地視察や関係者との協議を行った。調査結果の概要は以下の通り。

  • 植物工場関連では、先方の政府機関や民間企業の水耕栽培技術に対する期待感を強く感じることができた。ただし、草の根レベルでの地域住民の要求改善に沿った活動を目指すマスカット基金の活動には繋がりにくいという印象を得た。
  • 植物資源関連では、特殊成分を含む乾燥地植物(コロシントウリ、ホホバ、アロエ等)の有効利用という視点で、ドバイにあるICBA(International Center for Biosaline Agriculture)との共同研究を進めることができると、将来の草の根活動に繋がると感じた。また、ナツメヤシ生産の急速な伸びを考慮すると、ナツメヤシをキーワードにした活動の展開も興味深い。
  • 水産分野ではテラピアの養殖と水耕栽培を合体させて水資源の有効活用を図るアクアポニックス・プロジェクトが動き出していた。こうした活動に何らかの形で関与を継続して行くことが、将来的な草の根活動に繋がる可能性があると感じた。
  • 第三国研修関連では、シリアにおける節水灌漑技プロの第三国研修先としての可能性を検討するために関係者との協議を行ったが、研修に相応しい機関は見つからなかった。
  • 水資源関連では、ミストキャッチャーで得られた水資源を植林や地域社会のために有効に利用するような草の根活動の可能性があると感じた。
  • その他、小規模なマングローブ植林やメスキートのような侵入植生を有効に利用した炭焼き活動も将来的な草の根活動に繋がる可能性があると感じた。

 
参考資料1:AAIニュース第73号~106号:乾燥地域の植物あれこれ
参考資料2:AAIニュース第43号~48号:マングローブ生態系に学ぶ

水耕栽培用温室 

コロシントウリ

ナツメヤシ生産

ナツメヤシ利用製品

アクアポニックス用サイト

ミストキャッチャー

マングローブ植林

侵入植生メスキート

ラオス

 

国際耕種のスタッフが、1998年から2000年にかけて実施されたメコン川沿岸貧困地域小規模農村環境改善計画調査に参画する機会を得た。本開発調査においては、農民支援体制の整備や参加型手法を使った開発計画の策定手法の検討を通して、現地の研修機関であるParticipatory Development Training Center (PADETC) のスタッフとの友好関係を育むことができた。PADETCは当初、持続的な農業による農村開発を目指していたが、近年では関係者の能力開発としての実践的な研修に力が注がれている。主な活動内容には、食糧生産、資源管理、収入向上、教材や研修手法の開発、持続的開発に関わる若い指導者の養成等が含まれる。今後、PADETCとの交流を深めることによって協力関係を築き上げ、共同して現場レベルでの活動に参画して行きたいという構想を抱いてマスカット基金による活動を開始した。  

 
参考資料:AAIニュース第41号:草の根型協力を考える~国際耕種のアプローチ(5)

有機農場の桑畑 

 有機農産物ランチ 

桑茶造り 

染色と織物

オマーン

 

1995年以降、国際耕種はネジド地方農業開発やマングローブ植林計画における開発調査や専門家派遣事業を通して、オマーン国とは深い関わりを保っている。同国南部のゾファール州の山岳地域は、アラビア半島に位置しながらインド洋からのモンスーンの影響を受けて豊かな自然植生で覆われている。しかし近年、過放牧などの影響もあり、次第に植生の劣化が起こってきている。こうした山岳部における植生の劣化が、沿岸部におけるマングローブ林の生育に悪影響を与えているとも考えられている。そこで、この山岳部の環境修復・植生回復を地域住民の活動とリンクした形で推進するための交流や情報収集のために、現地連絡員を配置するなどしてマスカット基金による活動を開始した。 

 
参考資料:AAIニュース第40号:草の根型協力を考える~国際耕種のアプローチ(4)

支援構想

 養蜂技術講習

障がい者支援センター

乾期の山岳部

シリア

1994年から1997年まで、国際耕種のスタッフがJICA長期専門家として、シリア国農業農地改革省・農業普及局に派遣された。ここでは、業務の一環として現地側のカウンターパートと一緒に、薬用植物を中心とした有用植物ならびに現地有用技術に関する情報収集とデータベース作りを行った。さらに、他のスタッフが1999年から2001年まで同省訓練局に派遣された。その間、シリアで働く他の長期専門家や協力隊員達との交流の中で、同じ国際協力分野で活動するものとしての悩み、グチ、将来へ向けての改善点等々、さまざまなことを話し合う機会があった。そうした中から、有志の集まりとしての「ODA勉強会」が組織され、「自助努力と支援」や専門家と協力隊員間の「連携」を目的とした活動が始まった。これらの活動を通して、「参加型開発」や「草の根協力」の意味をシリアという国情の中で考え、コミュニティに根ざした活動の展開はどうあるべきかを模索して行こうとしている。

参考資料1:AAIニュース第32号:シリアにおける園芸療法の試み
参考資料2:AAIニュース第39号:草の根型協力を考える~国際耕種のアプローチ(3)

プレート作成

 堆肥と肥料入れ

種まき

全員集合

ジンバブエ

1994年から1995年にかけて実施されたジンバブエ国ムニャティ川下流域農業開発計画調査に国際耕種のスタッフが参加し、これを契機にカウンターパートとの付き合いを通してジンバブエ国との交流が始まった。マスカット基金による具体的な活動として、まず日本国内において「英語圏・アフリカ地域に限定した現地NGOの活動実績調査と資料収集」を行った。そして、それまでの交流も考え併せて、活動の対象国をジンバブエと決定した。次に、将来連携して活動できる現地NGOを選定するために、現地調査を実施した。選定に当たっては、住民参加、適正技術、適正規模、持続可能性といった言葉をキーワードとし、以下の諸点を重視した。

  • 我々のこれまでの経験を生かすことができるような、活動内容や対象地域であること。
  • 農業や村落開発を実施しており、地域に根ざした活動を目指していること。
  • 持続可能性・環境保全・住民参加などを重視し、かつ実際に現場を持って活動していること。

現地調査の結果を基に作成したジンバブエのNGOデータベースを検討し、連携相手として相応しいNGOを選定し、マスカット基金による活動を開始した。活動の一環として、国内外の援助機関によるNGOに対する支援の仕組み及び助成機関・制度に関する資料収集も同時に行った。このNGOはグループガーデンに対するSeed Loan Programを充実させるための必要資金として合計 261US$を計上してきた。過去の実績から、この小さな増資が多くのメンバーによって有効に利用されることは間違いないと感じ、マスカット基金としての支援を受け入れた。261US$というとても小さな金額ではあったが、その後十数年に亘ってローンに係る実績が報告され、グループメンバーの自立に対して非常に大きな貢献が出来たものと考えている。この活動がマスカット基金の典型的な活動となり、国際開発ジャーナルでも取り上げられたことはホームに記述されている通りである。

参考資料1:AAIニュース第36号:現地NGOとの連携~ジンバブエにおける国際耕種の試み
参考資料2:AAIニュース第38号:草の根型協力を考える~国際耕種のアプローチ(2)
参考資料3:AAIニュース第49号:261US$でできる国際貢献

岩山を利用した集水 

 住民参加ダム建設 

グループガーデン

グループ・ミーティング